【8月10日(土)晴】夜明け → バンテアイ・スレイ
4時に起き出す。
昨夜、チャブさんから何度も念を押された5時にロビーに出る。
当然だが外は真っ暗。
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朝5時過ぎのホテル前。 |
チャブさんのトゥクトゥクでアンコール・ワットに向かう。
アンコール・ワットに近づくほどに前を往く車やトゥクトゥクの赤いテール・ランプの数が濃くなってくる。
チャブさんは広い駐車場を通り越してドンドン奥に進んで往き、停まった所は西参道の真向かい。既に何台ものトゥクトゥクが居る。
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この駐車場は日の出を見るメッカらしい。 |
少しずつ明るくなってきたアンコール・ワットの上空は雲が厚く、綺麗な紅い空は望むべくもない雨季の朝空。期待していなかったの、でこんなモノかと納得。
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アンコール・ワット上空の朝焼け。 |
朝焼けの時間も終わり、チャブさんが『これからどうする?』
昨日チャブさんが提案してくれた『日の出の後、バンテアイ・スレイへ』というプランををお願いした。
さて出発という段になって、カメラの予備のバッテリーが二個ともホテルに置いたままなのを思い出し、一度ホテルに戻ってもらう。
ついでに "J All Day Dining" で朝食も済ませる。
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今朝の鶏クイティウ。 |
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今朝の朝食。 |
ホテルから北へおおよそ40キロメートルの地を目指し7時過ぎにホテルをスタート。
途中アンコール・トムのライ王のテラス前でチャブさんのトイレ休憩。
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ライ王のテラス。 |
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ガランとしたライ王のテラス前の売店と駐車場。 |
どの辺りなのか、細い道に入ってから急に路肩によってトゥクトゥクを止めたチャブさん。バイクを降りて後ろに回る。
後から小形のバイク(90 ccか110ccほどか?)を押してくる二人連れに何か声をかけている。トゥクトゥクに戻ったチャブさん、客席の下から二リットル入りの薄いピンク色をした液体が詰まっているペットボトルを取り出している。
どうやらガス欠でバイクを押していた二人連れに気づいたチャブさんが、彼らにガソリンを分けてあげたようだ。
後で聞くと『困っているときはお互いさまで、彼らは行きずりの他人だよ』と言う。忘れていた親切を間近に見せられててチョット感動。
道路が渋滞してきて他のバイクやトゥクトゥクが路側帯を走ってもチャブさんは相変わらず路側帯に入らない。
トゥクトゥクが67号線に入るとすれ違う車もなくなり無人の道を北に向かう。
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バンテアイ・スレイに向かう67号線。 |
ホテルを出て一時間半あまり、8時30分過ぎにバンテアイ・スレイに到着。ここもアンコール・パスの提示で入場できる。
◆ バンテアイ・スレイ(Banteay Srei)
パスのチェックを受けて場内に入る。赤土の大地と強い対比をなす濃く広がる緑は稲だろうか?
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眼に心地よい濃い緑は稲? |
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隣の草地では水牛がノンビリ草を食んでいた。 |
正面入り口の横に大きな碑が建っているが何が書いてあるのか、裏面にも読める文字は無かった。
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正面入り口横の碑。 |
967年に完成したとされるこの寺院は、主に赤色砂岩で建てられている。規模は大きくないが建物全体に保存状態がよく、残されてるレリーフ群はどれも痛みが少なく鮮明だ。
アンコール王朝摂政役のヤジュニャヴァラーハ王師の菩提寺として、ラージェンドラヴァルマン二世(在位944 - 968)とその息子ジャヤヴァルマン五世(在位968 - 1000)が二代に渡って建設したシバ神とビシュヌ神を祀った「クメール美術の至宝」と呼ばれる美しいヒンドゥ教寺院だ。
ただし実際にこの寺院を建立したのはヤジュニャヴァラーハとその弟だという。
バンテアイは「砦」スレイは「女」、バンテアイ・スレイは「女の砦」という意味だと案内板にあった。
東門から入る。
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東門。 |
東門の破風にはカーラの上に三頭の象がのり、さらにその上にヴィシュヌ神が座っているレリーフが施されている。
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東門の破風に施されたレリーフ。 |
東門を抜けると左右にリンガを模した石柱が並ぶ参道が西に延びている。
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左右にリンガを配した参道。
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リンガ参道の中間にある門は屋根が無く、門の中央を通して見えるのはさらに奧の第一周壁の門。この門の左右に残っている壁は第一周壁の外周を囲む周壁だったのかも知れない。
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リンガ参道の中間にある門。 |
リンガ参道中程の右手に建つ塔屋の破風には、ヴィシュヌ神の化身ナラシンハが阿修羅を組み敷いて、まさに殺そうとしている場面が描かれている。
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ヴィシュヌ神の化身が阿修羅王を組みふしている。 |
このリンガ参道中程の門をくぐると、さらに左右を環濠に挟まれた参道が続く。例年なら環濠の水が青い空を映しているのだろう。
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参道左右の緑は干上がった環濠。 |
突き当たりは第一周壁の門。
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第一周壁の門。 |
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第一周壁門の屋根と破風。 |
第一周壁門内側の破風にあるレリーフには、ヴィシュヌ神の妻クラシュミーが象の聖水で身を清めている様子が描かれている。その下はガルーダとナーガ。
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象に清められるクラシュミー。下はガルーダとナーガ。 |
第一周壁門をくぐると足元に背中の部分が欠けたナンディンがうずくまっている。ナンディンはシヴァ神がのる白い牛のこと。
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背中の欠けたナンディン。 |
半分欠けたナンディンの真ん前が第二回廊の東塔門。
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第二回廊の東塔門。 |
第二回廊東塔門の破風は踊るシヴァ神。シヴァ神の足元左下に座っているのはカリーカラミアという大変美しい王女、右下では雷神インドラ神が太鼓を叩いている。
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踊るビシュヌ神、カリーカラミア(左下)、インドラ神(右下)。 |
第二回廊東塔門を回ると左右に経蔵を配して中央祠堂拝殿が建っている。
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南経蔵(左)と中央祠堂拝殿(右)。 |
南経蔵の破風には、カイラス山で瞑想するシヴァ神とシヴァ神に抱きつく妻パールヴァルティーが、その下には二十本の腕と十の頭を持つ魔王ラーヴァナが瞑想の邪魔をしようとしている様子が描かれている。
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瞑想するシヴァ神とその邪魔をする魔王ラーヴァナ。 |
北経蔵の破風には三頭の象の上にヴィシュヌ神が、その下では戦車や弓が描かれているので戦争をしているのだろう。この破風のレリーフについては情報が見つからなかった。
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北経蔵破風のレリーフ。 |
南経蔵と北経蔵に挟まれた中央祠堂拝殿の後ろ(西側)
が中央祠堂、その後ろが聖堂。
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中央祠堂(中央)と南塔(左側)と北塔(右側)。 |
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中央祠堂の西側(奥)は聖堂。 |
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聖堂の前に並ぶハヌマン像。 |
北経蔵の前を北から西に回り込んで中央祠堂の裏(西)側に回る。
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中央祠堂と南・北塔の西面と中央祠堂拝殿(左)。 |
北塔の角に深く彫られたデバターが「東洋のモナリザ」。
このデヴァターは何時まで見ていても見飽きない不思議な魅力があり、その前を去りがたい。
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東洋のモナリザと呼ばれているデバター。 |
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こちらもモナリザに劣らずのデバター。 |
1923年にフランスの作家アンドレ・マルローが祠堂に彫られたデヴァターに魅せられてこれを盗み出し、国外に持ち出そうとして逮捕されてしまう話しは有名らしい。彼は後にこの体験を基に小説『王道』という作品を発表している。
知性が高いはずの作家にして、これを所有する気持ちを抑えられなくなってしまったということか。
第二周壁の西塔門破風にはシータ姫を捜して森に入ったラーマ王子と猿の兄弟喧嘩が描かれている。
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右端で弓を射るのがラーマ王子。 |
一番外側が第一周壁の西門で干上がった環濠には崩れた石柱が転がっている。
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第一周壁の西門。 |
西門を出たところで現地の人達が観光客を相手にカンボジアの音楽を演奏していた。
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西門の外でカンボジア音楽を演奏する人達。 |
西門から第一周壁の周りを回って東門に戻る。
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地盤のままにうねる第一周壁。 |
土産物売り場周辺の池に古代蓮(オオガハス)に似た蓮の花が咲いていた。
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古代蓮に似た蓮の花。 |
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