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  2006年10月: Ka8Bのレストア

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【10月15日】対空検査

北京出張中に耐空検査が終わってしまうのではないかと気掛かりだったが、幸いメーリングリストで10月15日が耐空検査日と知らされた。北京からの帰国の翌々日だ。メールには学生 AM8:00/関宿滑空場集合、AM8:15/K8B組み立て開始とある。

組み立てが始まる時刻に遅れないようにと早めに自宅を出て8時前に関宿滑空場に到着。
旧格納庫の裏手から昨夜滑空場の宿泊所に泊まった学生達が姿を現わした。森さんもこちらに泊まったそうだが先輩達の力の入り方が伝わってくる。
この日も9月30日に引き続き、読売新聞東京本社 柏支局から記者が取材に見えた。

先ず曳航機のパイパー・スーパー・カブを格納庫から出してランウエーへ。

新格納庫の扉が開けられるとすっかり化粧直しが終わったKa8Bが今日の晴れ舞台を静かに待っている。

冨永くん特製のキャスター付きスタンドで晴れ舞台を待つKa8B。

パネルから作り直された計器盤もコックピットにキッチリ納まっている。今日からソアリストはこの一つ一つの計器で空を往くのだ。

コックピットに納まった計器盤。

格納庫から江戸川の土手を超えてランウエーまでの移動もキャスター付き特製スタンドが威力を発揮してスムーズに進む。

(下の写真を撮った直後、土手を上ろうとして左ふくらはぎに肉離れを起こす。あっという間に腫れあがって足を引きずらなければ歩けなくなってしまった。まだ何も始まっていないというのに…。大事な場面を追いかけて記録することができるだろうか。大きな不安がよぎった。)

外光の下、機体の赤がひときわ鮮やかだ。

続いてソロリソロリと主翼を運ぶ。
Ka8B専用のトレーラーは現在栗橋の学生航空連盟(SAF)・読売大利根滑空場で製作が進められているので、機体も主翼もむき出しでの移動となった。

JA2233に新たな歴史が書き加えられるのも間もなくだ。

広いランウエーに並んだ機体と主翼の赤と白がこれから始まる若々しいイベントを象徴しているようだ。 ソアリングのために引き出された僚友の機体まだ一機もランウエーに出ていない。

組み立て前に手順の確認。

はじめに左側の、続いて右側の主翼を機体に合わせ左右の主翼を連結する。翼端を支える学生も久野さん(学生航空連盟教官)の声に合わせて左右の主翼の連結ピンが通るまで翼端を微妙に上げたり下げたりする。

主翼の取り付けをする久野さんと奈良さん。奈良さんも学生航空連盟教官だ。

水平尾翼も付いて各部の作動確認。
赤白の市松模様に仕上げられたダイブ・ブレーキは冨永くんのアイデア。オリジナルとは唯一異なる新生Ka8Bの冨永スペシャル・カラーリングだ。

仕上げに手間がかかった赤白市松模様のダイブ・ブレーキ。

作動確認も終わり曳航機のパイパー・スーパー・カブが待つランウエーまでみんなで機体を愛おしむように丁寧に押してゆく。

初ソアリングのスタート地点まで運ばれるKa8B。

今日2回実施される耐空検査の1回目は久野さんが実施する。久野さんは18年前にKa8Bに乗っていたことがあると言う。今日の初ソアリングはどんなソアリングになるのだろう。

コックピットに納まり耐空検査に臨む久野さんと、それをサポートする奈良さん。

Ka8Bの初ソアリングに曳航機のパイパーでお伴をするのはレストアの指導にも見えていた森さんだ。佐藤さんも眩しそうに空を見上げながら「耐空検査にはまたとない日和だ」とポツリ。

パイパー・スーパー・カブから伸びた曳航索もKa8Bに着けられた。

いよいよスタート。パイパー・スーパー・カブが徐々にスロットルを開けゆっくりと進む。奈良さんが左翼端で腕を振り子のように振りながら曳航索が伸び切るタイミングを見る。緊張の一瞬だ。

パイパー・スーパー・カブに曳航されてランウエイを滑り出すKa8B。

上の写真の直後にKa8Bはスッと浮き上がりふらつくこともなくそのまま曳航機の後について上昇してゆく。

(足が痛くてKa8Bが大地を離れると思われる場所まで事前に移動することができなかったのは心残りになってしまった。学生航空連盟や関宿滑空場の皆さんにも申し訳ないと思う。)

Ka8Bが浮いた瞬間、学生達が「アッ、浮いた~!」「ウワ~ッ、飛んだ」「信じられな~い!」と言いながらどんどん小さくなってゆくKa8Bの姿を追ってランウエーを行く。ちょっと感動的な瞬間だった。

小さくなっていくKa8Bの後ろ姿を追う学生達。

予め予定されている検査項目に従って高度3,000ftから500ftの高度差で機体の性能検査を終えてランウエーに戻ってきたKa8Bの姿は、赤い体と先端を赤くした白い羽根が赤トンボのイメージそのものだ。

1回目の耐空検査を無事に終えてランディングに入るKa8B。

コックピットから下りた久野さんとKa8Bの下に走りよった学生達、レストアを指導された佐藤さん、それに学生航空連盟会長の五島さんで記念撮影。

左端が陰でレストアを支えた五島学生航空連盟会長。

2回目の耐空検査を行う佐藤さんが、1回目の検査を行った久野さんから新生Ka8Bのくせを聞いてコックピットに向かう。関口さんが曳航機を操縦する森さんに声をかけてくださったお陰でパイパー・スーパー・カブの後部シートに載せて頂くことができ、2回目の耐空検査中のKa8Bを空から撮影することができた。

パイパー・スーパー・カブを見上げる佐藤さんの姿が分かる。

耐空検査を終わり地上に戻った佐藤さんを学生達が取り囲んだ。10月15日のこの日は佐藤さんの72回目の誕生日でもあったのだ。学生達から佐藤さんに花束が送られその場に大きな拍手が湧いた。予想外のプレゼントに佐藤さんは照れと喜びが混じりあった表情で学生達と記念写真に写真に収まった。

この夏をKa8Bと間に共に過ごした佐藤さんと学生達。みんないい顔をしている。

耐空検査も無事終わりその場で耐空証明書が発行され学生代表の冨永くんに手渡された。

機体の側で耐空証明書を手にする冨永くん。やりましたね!

この後Ka8Bは栗橋の学生航空連盟の本拠地、読売大利根滑空場に曳航されていった。
"Ka8B" JA2233は既に読売大利根滑空場で学生達にソアリングの楽しさを伝えている"Ka6E" JA2234とともに学生達に永く愛され続けるだろう。

(MXブーツの中一杯に腫れ上がってしまった左足でバイクを動かせるか心配だった。スターターをキックすることはできた。走り出してシフトアップするとズキッとくる。痛みに気をとられないように慎重に帰宅した。Ka8Bの記念すべき日に怪我をしてしまった。関係者の皆さんに納得していただけるレポートになっているだろうか?)


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