【4月28日(金)晴】回坊
ホテル真ん前のロータリー中央に西安のシンボルともいえる鐘楼が建つ。このロータリーを起点に東大街、西大街、南大街、北大街と四本の大通りが走る。
ホテルを出ると直ぐに喉がカサカサしてくるのは、朝から空をうっすら黄色くしている黄砂かPM2.5のせいか。ホテルを出て西大街に入りワンブロックほど西に歩いて竹笆市街(道路名)に入る。
 |
竹笆市。 |
直ぐに目についたのが電柱の上でトグロを巻く同軸ケーブル、ホーチミンでも似たようなとぐろを見たが、これはインターネット回線だろうか。
 |
電柱の上でトグロを巻く同軸ケーブル。 |
街路樹の葉に隠れるように、赤や青の食堂の看板が並んでいる。
シャッターを開けたばかりの店先から盛大に湯気を上げている店に、次々と地元の人たちが吸い込まれてゆく。入り口に掲げられた看板には「東府小揚 澄城水盆羊肉」とある。
地元の人たちに続いて店に入る。
 |
東府小揚 澄城水盆羊肉。 |
席に着く前に入り口のレジで注文。
店員が見せてくれたメニューは馴染みの無い漢字ばかり。説明してくれるのだが早口で聞き取れない。
メニューを良く見ると「麺類」と一括りにした欄を見つけたので、その中から烩面を注文する。10元(175円)。
早口で何か聞いてくる。『要不要醤?』あるいは『用不用醤?』と言っているようだ。
テーブル上の麻辣味醤の小瓶を指差している風なので、醤味にするかどうか訊いてきたのだろう。初体験の烩面なので『不辣味』でお願いする。
 |
烩面。 |
麺はやや太めでコシがある。
麺を覆っているのはスープではなく、餡掛けの餡のようにドロリとしている。羊の油がたっぷりと厚い層を作っている。辛さの中に甘さを感じるのは羊の油のせいだろう。
スープを絡めて麺を口にふくむと「不辣味」で頼んだのに、微かな痺れを感じるのは山椒を使っているからだろう。その山椒と一緒に羊肉の好い香りが鼻腔を抜けてゆく。スープも残さず完食。
注文を聞いてくれた彼女、出された烩面を食べているのか気になっている様子で、時々こちらに気を配っているのが分かる。確かに周囲は地元と思われる客ばかりだ。
店内は思ったより広く、がっしりした赤木のテーブルが八人掛けで置くまで並んでいる。
 |
赤木のテーブルが並ぶ店内。 |
帰りしなに店の奥まで行き、厨房のスタッフたちに『好吃了!』と声をかける。
スタッフの一人が厨房から出てきた。差し出された彼の両手をとって握手。強く握った手に、強く握り返してくる人が珍しい。
東府小揚澄城水盆羊肉を出てから竹笆市街を奥へ進む。
気紛れで更に細い道に入ると、奥の方まで旗や幟を売る店がズラッと並んでいる。馬坊門(路地名)だ。
 |
旗や幟を売る店が並ぶ馬坊門。 |
開けたばかりの店内に缶バッジやLEDのサインが並んでいる。消火栓、配件庫、奨杯、彫刻などのサインが赤く青く店内を照らしている。
 |
 |
開けたばかりのサイン屋さん。 |
掃除をしている店の人に声を掛けて店内を撮らせてもらう。彼女にレンズを向けると大慌てで店の奥に引っ込んでしまった。
 |
とうとうこちらを向いてくれなかった店の人。 |
缶バッジを並べた額が店の前にも置いてあった。
 |
缶バッジの額。 |
馬坊門、南院門、院門巷と路地をたどる。すれ違う土地の人がこちらを訝しげに見るが気軽に『ニーハオ』。何を捜すでも無い、こういう気紛れが一人旅の好いところ。
路地が途切れて少し広い南広済街に出たので北上、西大街にぶつかる。
真向かいに百盛(百貨店の名前)の大きな建物が見える。左手から減速せず歩行者を無視するように走ってくる車や、音のしない電動スクーターを避けながら西大街を百盛側に渡る。
 |
西大街と百盛。 |
百盛の下を通り抜けると正面に「回坊」と書かれたゲートが見える。
 |
「回坊」ゲート。 |
ゲートの奥は回族(イスラム教を信仰する中国人)の人たちが軒を連ねて商売している北広済街だが、南広済街に比べると随分と狭い路地だ。
羊肉と強い香辛料の香りが充満する回坊を、鼻孔を膨らませて進む。
 |
羊肉と香辛料の香りと結構な人込みの回坊。 |
行き交う人たちの中に、頭に丸くて上が平らな帽子を載せた男性や、被り物でスッポリと髪を包んだ女性の姿を見かけるが回族の人たちだ。周囲に飛び交う言葉は回族訛りの中国語のようだ。
誰もが大声で話しているそんな人込みを、荷物を積めるだけ積んだ電動スクーターが音も無くすり抜けてゆく。
人混みの切れ目で「劉老四牛肉擀面荘」と看板の掛かった食堂の中に緑色の看板が目についた。
 |
店内の緑色の看板に注目。 |
看板には、昨年の夏(2016年7月)Facebook上で、Unicodeに収録される可能性があると話題になった総画数58画のあの文字が使われている。麺の名前らしいがなんと読むのだろう
帰国してから調べたらUnicode 04319(UTC-00791)に登録されていた。この麺のためだけに使われる漢字で<ビャン・ビャン・メン>と読む。
 |
左の二文字がUnicode 04319。 |
西羊市街まで来ると角の店の前に長い行列ができている。看板に「劉紀孝腊牛羊肉店」とある。
 |
人気の劉紀孝腊牛羊肉店。 |
先頭に首だけ突っ込んで覗くと、腕まくりをして額に汗を浮かせた店員が客の声に応えるように大きな肉の塊を切り分け、ハカリに掛けてレジ袋に放り込んでいた。
客が手にする現金と引き替えに手渡す作業が目まぐるしくい。
 |
生肉ではなく燻製肉のようだ。 |
大きな塊のまま燻製した肉を売る「劉紀孝腊牛羊肉店」の一角にできた行列は一向に短くならない。この肉をビールのつまみにしたら旨いだろうな!
「劉紀孝腊牛羊肉店」の角を右折、西羊市街を往く。
 |
西羊市街。 |
 |
吊るされた裸電球が、夜は屋台になることを思わせる古い家。 |
西羊市街を進んで行くと入り口に「化覚巷旅游記念品街」と標示のある路地を見つけた。
 |
 |
化覚巷旅游記念品街の入り口。 |
旅行かばん、帽子、Tシャツ、版画、ポスター、額、切り絵、人形、などなど土産物を売る店が薄暗い路地の両側に並ぶ。
奥までずっと土産物店が並んでいる。
その内、
アーケードの屋根が途切れ明るい日差しのT字路に出た。
目の前の煉瓦積みの門は西安清真大寺だ。
|