【5月5日(木)】撫順
部屋にあるただ一つの小さな窓からは空模様を確認することができない。こんな部屋に泊まったのは初めだ。
エレベーターホールまで行って確かめたら昨夜は雨が降ったようだ。
セイフティーボックスを開けてもらおうとフロントに下りて行くと、フロントカウンターの前はチェックアウトする宿泊客が並んでいる。
先にホテル隣の杭州小籠包屋で朝食を済ませることにする。ホテルを出ると昨夜の雨の効果だろう、昨日までよりも喉が楽なのがハッキリ分かる。
朝食を済ませてホテルに戻り、セーフティーボックスを開けてもらおうとしたら、鍵は合っているのに開かない。鍵が何処かに引っかかっているようだ。次第にフロント嬢は焦りはじめ、近くを通りかかる同僚に声をかけマニュアルらしき物を出してきて読みながら開けようとするが状況は変わらない。
携帯電話を取り出して誰かとしゃべり始めた。どうやら昨夜、セーフティーボックスの受付をした同僚と話をしているようだ。何やらコツがあるようで、電話をしながら鍵を廻したらスッと開いた。ヤレヤレ!
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なかなか開かないセーフティーボックス。 |
ようやく開いたセーフティーボックス、預けた現金を少しポケットに移してホテルを出る。ホテルの真ん前で客待ちをしているタクシー2台が声をかけてきた。
瀋陽北駅の近くにあるはずの高速バスターミナル(遼寧省快速汽車客運站)まで行きたいというと30元だという。バスターミナルからホテルまで来た時は20元だったと言うと、運転手が二人がかりで30元の一点張り。20元なら乗るが、その代わりにメーターを倒せとやりあったが通じたかどうか。
果たしてどのくらいの時間がかかるのか乗ってみたら10分ほどでバスターミナルに着いた。
30元よこせと言うから20元だけ渡して、たった10分しか走っていないので20元で十分だ、昨日はバスターミナルからホテルまで20元だったぞ、と思わず語気を荒げる。
乗る前に30元をあいまいにしたまま乗車したこっちも悪いのだが、メーターも倒さずに走っていることをなじると、運転手はとうとう渡した20元を投げ返してきた。メーターなら多分20元以下だろう。何時までやりあっていてもしかたがないので、乗る前に了承した30元を渡して車を降りる。
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料金を投げて寄こした運転手氏。 |
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ダッシュボード上のライセンス。 |
盤錦から瀋陽に着いた日に大連までの切符を買った高速バス切符売り場に入って撫順行きの運行ダイヤを探したが、何処にも撫順の文字が無い。多分バスターミナルを間違えているのだろうと思い、案内カウンターがあったので聞いてみると撫順行きは駅前のバスターミナルだという。
高速 バスターミナルの直ぐ裏手が瀋陽北駅になっていた。
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瀋陽北駅前。中央が近距離バスターミナル。
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駅前にバスレーンが並んでいる。制服姿を捕まえて撫順行きのバスが出るレーンを教えてもらう。
撫順行きのバスはひっきりなしに出ている。どうやら撫順行きは路線バスになるらしい。運賃は乗車するときに車内で払う。11元(約143円)。
10:00に瀋陽北駅前を出発して11:30に撫順南駅前に到着した。所要時間は1時間30分。西一路のデパートの前で降りると瀋陽よりもさらにホコリっぽく、風も冷たい。
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西一路でバスを降りる。 |
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歩道橋から見た西一路の東側。 |
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歩道橋から見た西一路の西側。 |
アジア最大の露天掘り石炭鉱「西露天砿」を目指して歩き始める。
西一路から西二街に入ると並んだ屋台から美味そうな羊肉串焼きの匂いが流れてくる。美食一条街だ。
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西二街の屋台街「美食一条街」。 |
小敏烤羊肉串店で羊肉串焼き3本を小腹に収める。1本1元(約13円)。羊肉串店の小姐、注文を訊く間は顔を上げるのだが、カメラを向けると下を向いてしまう。
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小敏烤羊肉串店のはにかみやさん。 |
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使用済み焼き串のオブジェ。 |
数軒隣のカウンターに巻き寿司みたいな物が入ったパックが並んでいる。「寿司屋」の看板が出ているから寿司なのだろう。こんな所に何で日本の寿司が、と思ったがここも嘗ての満州、多くの日本人満州鉄道関係者が居留していた時代があったのだった。
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巻き寿司を売っていた寿司屋。 |
羊肉串焼きで小腹も治まりさらに西二街を南に下る。
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撫順の繁華街、西二街。 |
西二街が西五路と斜の解放路とが交叉する辺りが一番賑やかなようだ。週末や祝祭日の前夜は賑わうのだろう。
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この辺りが一番の繁華街らしい。 |
その賑やかな通りにある公園で、スポンジ製の大きな筆に水たまりの水を含ませて漢詩を書く人がいた。直ぐに乾いてしまうが達筆と言える字だ。大連でも見たことがあるが、この人たち、毛筆で紙に書くとどんな字になるのだろう。
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西四路の公園書家。 |
西二街をさらに進むと二軒並んだ「正宗 蘭州押麺」と「老字号 蘭州押麺館」の前に小型三輪タクシーが何台も停めてある。よほど安くて美味いのだろう。蘭州とあるから回族(イスラム)料理かもしれない。気になったが先ほど羊肉串焼きを食べたばかりだ。それにしてもこの小さな店で常套句とはいえ「正宗(本家本元)」とか「老字号(老舗)」とつけているのが中国だ。
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「蘭州押麺」の看板前に並ぶ小型三輪タクシー。 |
西二街が西八路に出たので左折。
露天商街になっている解放三街の角で電機部品やケーブル類をを並べているお兄さんに西露天砿にまでの道筋を尋ねると、もう少し先に行って右に折れろと教えてくれた。相変わらず大ざっぱな教え方だがお礼を言って先を急いだ。
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露天商街になっている解放三街。 |
パワーショベルが道ならしをしている工事中の銀行の角を入るように教えられてきたのだが、道幅が狭い上に未舗装だ。果たしてこの道で好いのか。人が大勢通るし方向も間違っていないようなのでこの道を入って行く。
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未舗装の道がずいぶん長く感じたが500m余りか。 |
間もなく未舗装道路も終わるかという辺りで加藤剛風の露天商のお兄さんと眼があってしまった。
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眼があった白ヘルメットのお兄さん。 |
近づくと屋台の中にはもう一人、木村拓哉風のお兄さんも声をかけてきた。
屋台から下がっているのは細いナイロン糸で編まれた網のようだ。端に重りが着いている。網を指さしながら網を打つ身振りをしたらやはり投網らしい。そういえば解放三街にも「漁具」の看板を掛けている家があった。撫順の東側に東西22kmはある大きな湖(ダム湖らしい)があるが、そこで漁をするのだろうか。
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撫順の加藤剛と木村拓哉。 |
未舗装道路が終わった所が西富平路でこの道を突っ切って、さらに撫順炭鉱線を横切ると駅前に出た。砿務局駅らしい。
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改装されたのか未だ新しい砿務局駅。 |
西露天砿への抜け道を探して駅の周辺をウロウロしたがそれらしい道が見つからない。
駅の事務所から同じ作業服を着た人達が出てきてこちらを見ている。鉄道関係者のようだ。一人で駅の周囲をうろついている旅行者風情を不審に思ったのだろう。
西露天砿迄の道筋を尋ねると西富平路に戻って、もっと右へ歩くと大きな交差点があるから、そこを右に曲がれとみんなで丁寧に教えてくれた。
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鉄道職員の皆さん達。 |
来た道を西富平路まで戻り大きな交差点を目指す。道路はあちらこちら大きな穴が明いていて車やバスが通る度に砂埃を巻き上げて行く。
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