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  2017年2月:ソウル
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国立中央博物館清洲古印刷博物館教科書博物館

【2月19日(日)】 清州古印刷博物館

国立中央博物館から二時間余、130キロメートルほどをバスで移動。到着したのは忠清北道清州市興徳区直指大路にある清州古印刷博物館。

活字の博物館に行くとは聞いていたがこんなに遠いとは思いもしなかった。

清州古印刷博物館全景。

この博物館は、この地に隣接する興徳寺において1377年に金属活字によって印刷された「直指(チッチ/Jikji)」にちなみ、木版印刷から金属活字に至るまでの韓国の印刷文化を紹介するために1992年に建てられたもの。

博物館前に設置されている「直指」の碑。

「直指」のブロンズ像。

館内には古い木版印刷物の他に人形を使って金属活字ができるまでの工程を展示してある。

博物館の入り口。

入り口を入るとロビー正面の壁に嵌め込まれた「直指」の概要を写真にした大きなコルトン(電飾看板)が眩しい。

ロビーの「直指」のコルトン。

「直指」は正しくは「白雲和尚抄録仏祖直指心体要説」と言い、仏陀と僧侶たちが残した言葉を要約して上下二巻に纏めた本。上巻は伝わっておらず、下巻の原本のみがフランス国立図書館に所蔵されており2001年にユネスコ世界遺産に指定されている。当館に展示されているのはレプリカ。

ドイツのグーテンベルクが初めて金属活字を使って42行聖書を印刷したのが1455年といわれているので、1377年に刷られている「直指」は42行聖書よりも78年早い金属活字による印刷物ということになる。

李氏朝鮮第4代国王の世宗によって表音文字「訓民正音(ハングル/Hangul)」が公布されたのは「直指」が印刷されてから69年後の1446年。

展示ケースの「直指・下巻」はレプリカ。

ここからは人形による金属活字の製造工程の展示。

【字体の選定】
既存の木版刷りの本から活字にする文字を選び出す。

字体選定。

【蜜蝋の精製】
活字の鋳型を作るための蜜蝋を精製する。

蜜蝋の精製。

【蜜蝋父型の作成】
精製した蜜蝋を棒状に整形し、その上に紙に書いた原字を張り付け、それに沿って文字を蜜蝋に凸刻する。

蜜蝋を棒状にし(左)、文字を凸刻し(中央)、一文字ずつ切り分ける(右)。

一文字ずつ切り分けた凸刻字に足を付けて台座に並べる。

凸刻字の中子。同じ文字を複数彫っているのが分かる。

【金属活字の製造】
蜜蝋の凸刻字で鋳型を作り、そこに溶かした金属を流し込んで活字を鋳出す。

凸刻字から鋳型を作る。

蜜蝋の凸刻字と鋳型の様子。

鋳型に溶けた金属を流し込む。

鋳型を割って金属活字を取り出す。

【組版】
蜜蝋を流し込んだ枠に出来上がった活字を並べて印刷用の版を組む。蜜蝋で一つ一つの活字を固定している。

活字を枠に並べて組版する。

【印刷】
組み上がった版にインクを塗り、そこに紙を載せて刷る様子は版画と同じ。

版に紙を載せて刷る。

版にインクを付ける作業。

【校正】
組んだ文字に間違いがないか刷り上がりで校正する。

原本を参照しながらの校正。

【製本】
校正後の刷り本を揃えて一冊ごとに糸で綴じて製本する。

三人で分業しているが作業内容の詳細は不明。

人形による活字製法の展示とは別に、やはり蜜蝋を使った活字製法の説明展示があった。

下の写真は蜜蝋の塊(左上)、棒状にした蜜蝋とそこに貼り付けた原字(左下)、文字を凸刻してから切り離した凸刻文字(中)、凸刻文字に付ける蜜蝋の足(右上)、足をを付けた凸刻文字(右下)。

蜜蝋が形を変えて金属活字の種になってゆく。

足を付けた凸刻文字を蜜蝋の土台に取り付けると鋳型をつくる中子になる。

葉を切り落としたソテツの幹のような凸刻字の中子。

凸刻字を中子にして鋳型を作り、中子を溶かし出した鋳型に溶けた金属を注ぐと活字ができる。

鋳型を割ると活字が出てくる。

鋳上がった活字の塊から一文字ずつ切り離すと活字になる。

一文字ずつ切り離した活字を並べた展示は「直指」の最後のページのようだ。

よく見ると「直指」の最後の二ページが組まれている。

上の写真の右下、四文字を拡大。

上の拡大した四文字はココ。

館内を一巡してロビーに戻ると、このツアーに同行された洪允杓(Hong, Yun Pyo/前 韓国・延世大学教授)さんが一人一人に清州古印刷博物館のお土産として「直指」をモチーフにしたマグを手渡してくれた。これはいい記念になる。洪允杓さん、ありがとうございました。

マグの柄は表紙と1ページ、反対側に最後のページがあしらってある。

入り口の門柱に「興徳寺址」とあるのが読める。
興徳寺址は清州古印刷博物館の右手丘の上にあるのだが、今は何もないというので訪ねていない。

門柱の「興徳寺址」。奥は清州古印刷博物館。

道路を挟んで古印刷博物館の斜向かいにあるのが古印刷博物館の付属施設「印刷体験館」。

印刷体験館。

閑散とした印刷体験館に入るとテーブルに無造作にポツンと一台だけ、版をくみつけた卓上のテキンが陳列してあった。

版が組みつけられて展示されていたテキン。

主な展示は二階にあるというので入り口を入ってそのまま二階に上がるも、興味を惹かれる展示がなく早々に引き上げる。

二階に展示してあった日本の株式会社ツガミ製のベントン母型彫刻機。

既に午後5時を回っているが次の見学場所にバス移動、結構な強行軍だ。

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