今までで私が一番衝撃を受けそして唯一心を動かされたのがシャドウボックスアートです。1987年以来続けているウエイトトレーニングに通ずるところがあり、日々こつこつと地道に続けられる練習によってのみ筋肉が大きくなるように、シャドウボックスも毎日こつこつと作り込むことによって全体に厚みがつき、細部がより細やかな表情を現わしてきます。
制作する者一人ひとりの感性・個性・創造性によって微妙に異なる作品の仕上がりが、同一の元絵からでも決して同じ作品が生まれてこない理由です。
時間とともに元絵に描かれている建物や植物、生き物、人物そのほか全てのものが命を吹き込まれて立ち現れてくる、この魔法のような三次元の世界がシャドウボックスの魅力です。
1997年にそれまでの夢だったマイホームを実現し、自分への褒美として絵画を購入しようと思い立ち額縁屋を訪れました。そこで私の目に飛び込んで来たのは立体的に仕上げられた絵でした。帆船模型がもつような細部にこだわった仕上がりと箱庭がもつ情景描写へのこだわりが私を圧倒しました。
平面的な絵が奥行きを持つことによって彫刻のような厚みと立体感が生まれ、描かれているものの裏側が覗けるのではないかと思わせる不思議な世界に変わる。作品によっては表面がガラスのように仕上げれられたものもあり、数枚の紙からでき上がる幻想的なアート、それがシャドウボックスアートとの出会いでした。
野崎 栄一
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